冷静な天才外科医の弱点は、私でした

縮まらない




 席に戻り、椅子に座ってパソコンを開いた。

 いつもの画面、いつもの仕事。

 なのに、文字が頭に入らなくてマウスを握る手に力が入る。

 資料の数字を見ても、何度も同じところを読み返してしまう。


 ーー喉が詰まる。


 別に教えてもらう約束なんてしていない。

 恋人でもなくて、仕事仲間だ。だから宗形先生に非はない。

 わかっている。わかっているのに。

 寂しかった。


「ひかる」


 千春が私の隣に立った。


「大丈夫?」

「……うん」


 私は笑おうとして、顔を引き攣らせた。


「本人から聞きたかった」


 ぽつりと言葉が漏れた。

 千春は何も言わなかった。


「私」


 指先を見る。


「先生のそばにいると思ってた」

「……うん」

「でも」


 声が震える。


「全然、そばにいなかったんだなって」


 千春が静かに私の肩へ手を置く。


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