冷静な天才外科医の弱点は、私でした



 うつむいたけれど、涙は出なかった。

 でも胸の奥が、ひどく痛かった。

 そんな状態でも仕事は待ってくれない。


「仲山さん、この特定薬剤管理指導の記録なんですけど……」

「すみません、このクリニックからの患者紹介数の分析結果が……」

「そろそろ診療報酬改定の時期ですよね。次の議題に……」


 次から次へと舞い込む仕事に集中することで、どうにか憂いを心の底に押し込んだ。

 ……そんなことをすれば、当然反動があるわけで。

 その夜、私は時計の音を聞きながら何度も寝返りを打った。

 海外へ行く宗形先生。

 もっと大きな病院、もっと大きな仕事、もっと多くの人との出会いーーそんな未来を想像する。

 そして、隣にいる女性まで勝手に想像してしまう。

 綺麗で、頭がよくて、宗形先生と同じ世界にいる人。

 私なんかよりずっとふさわしい人。

 胸が締めつけられた。


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