冷静な天才外科医の弱点は、私でした



 私は何も言わずにそれを見ていた。


「先生?」

「いや」


 宗形先生は立ち上がった。


「……何でもありません」


 それだけだったけれど、いつもの宗形先生とは違った。

 落ち着きがなく視線をあちこち彷徨わせる。

 何度も、言葉を選ぶように口を開いては閉じた。


「……海外のこと」


 埒が開かず、私が言った。

 宗形先生の動きが止まる。


「聞いたんですね」

「はい」


 宗形先生は視線を落とした。

 書類にしわが寄って、力を入れたのがわかった。


「まだ決まっていません」

「わかっています」

「……そうですか」

「でも」


 私は息を吸った。


「どうして、私には言ってくれなかったんですか?」


 宗形先生が顔を上げて、目が合う。

 その瞬間、宗形先生は何かを言おうとした。

 でも言葉の代わりに、視線を外してーーまた私を見る。


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