冷静な天才外科医の弱点は、私でした
「先生」
私がもう一度呼ぶと、揺らぐ目が私を捉えた。
「先生には……私よりもっと、ふさわしい人がいると思います」
宗形先生の表情が凍りついた。
口を開いても言葉は聞こえてこなくて、代わりとでも言うように、拳を軽く握る。
そして、ゆっくり開いた。
「……どうして」
ようやく、それだけが部屋に響いた。
「どうして」
宗形先生は、それ以上何も言わなかった。
私は目を逸さない。
「先生は、何でもできるから、海外にも必要とされて、今よりもっと大きな仕事ができる。だから……私なんかじゃ」
その瞬間、宗形先生が一歩だけ私のほうへ近づいてーー途中で止まる。
伸ばしかけた手も下ろして、触れようとして触れなかった。
何も言わなかったけれど、ただ私を見るその目が苦しそうだった。
……この人は私を拒んでいるんじゃなくて、言えないだけなのかもしれないと。