冷静な天才外科医の弱点は、私でした
6.正念場
ピンチでも
数週間後のある日、午後三時四十二分。
新しい心臓病治療センターで、宗形先生の手術が始まっていた。
私は手術室の外で、通常業務を続けていた。
ここに来るまで、宗形先生とは何度も意見をぶつけてきた。
最初の予算会議で、私は彼の計画を見て言った。
ーーこの予算案では、無理です。
設備も、人員も必要だった。
だから削るのではなく、他病院との連携を組み合わせた。
一つの病院ですべてを抱え込まない。
必要な医療資源を、必要なときに融通できる体制を作る。
宗形先生は、その案を受け入れた。
そして今日、その仕組みが初めて試される。
「ひかる」
千春にポンと肩を叩かれる。
「いよいよだね」
その目は力強く、成功することを疑っていない。
「うん。長かった……」
思わず遠い目になってしまいそうだけど、ここからが正念場だ。