冷静な天才外科医の弱点は、私でした
7.エピローグ
どうしようもない独占欲
付き合い始めて、数週間。
仕事中の圭は、相変わらず完璧だった。
難しい手術では誰より冷静で、会議では迷いなく判断を下す。
後輩には厳しく、患者には誠実。
海外とのオンライン会議も、当然のように何ヶ国語でもこなす。
誰が見ても隙のない男。
けれど、私だけは知っている。
恋人になった圭には、仕事中には絶対に見せない顔があることを。
朝のことだ。
デスクにつくと、一杯のコーヒーが置かれていた。
通りかかった千春がひっそりと笑う。
「宗形先生?」
「声、大きい」
私は慌てて周囲を見たけれど、幸い誰もこちらを見ていない。
カップを持ち上げると、いつものミルクにいつもの温度。
そして小さな付箋には几帳面そうな字で、
《今日は昼休みを取って》
と書かれていた。
付き合う前なら、コーヒーを置いてくれるだけだった。