冷静な天才外科医の弱点は、私でした



 昼休み、私は予定どおり席を立った。

 そのとき、スマートフォンが震えて手に取る。


《食べた?》

「……」


 無心で《食べます》と返信した。

 すぐ既読がつく。


《よかった》

 
 それだけなのに、私は笑ってしまった。

 圭は、私が自分でできることを奪うわけではない。

 ただ私が自分を後回しにしないように、少しだけ先回りする。

 そのことが、なんだか嬉しかった。

 午後の仕事を終え、経営企画部のフロアを出ようとしたところで、高瀬先生に声をかけられた。


「仲山さん、このあと時間ある?」

「このあとですか?」

「うん。前に話してた店、予約取れたんだ。よかったら一緒にどう?」


 高瀬先生は、いつものように気軽な笑顔を浮かべている。


「えっと……」


 どう断ろうか返事に迷っていると、背後から低い声が落ちた。


「仲山さん」


 心臓が跳ねた。


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