冷静な天才外科医の弱点は、私でした
振り返ると、そこにいたのは思った通り圭だった。
白衣のポケットに片手を入れたまま、こちらへ歩いてくる。
「宗形先生……」
「これ、君のだろ」
そう言って、私がデスクの上に置き忘れていたファイルを差し出す。
「あ、ありがとうございます」
「さっき探してただろう」
「わざわざ持ってきてくれたんですか?」
「通り道だったからね」
淡々とした返事。
けれど圭の視線は私ではなく、その隣にいる高瀬先生へ向いていた。
ほんの一瞬だったのに、空気が少しだけ変わった気がした。
「宗形先生、お疲れさまです」
「高瀬先生も」
「仲山さん、今から食事に誘ってたところなんですよ」
高瀬先生が何気なく言っても、圭の表情は変わらなかった。
「そう」
「はい。前に話してた店なんですけど――」
「……仲山さん、今日は何時に帰る予定だった?」