極上チャイナマフィアは、健気なカフェ店主を逃がさない

四章

陳に迎えられ、いつものように車に乗り込む。
今日は会合はなくて、諸々の下見だ。
周防組の依頼を先週正式に受けたが、その他にも周防組以外からも依頼は受けている。
ちょうど良いから依頼を受けたシマを、直接見ようと思っていた。

走り出した車の中で、俺は茉莉から聞いた話を陳に話した。
そして、新会長だという中国人オーナーの金の土地買収を妨害すると宣言した。

陳は静かに頷き、パッドの画面を開いた。

「その金というオーナーは、このリストに載っている人物に間違いないでしょう」

「向こうから顔を出してくれて助かる」

「えぇ。これで黒幕へと一歩近づけますね」

「だな。まぁ、一歩と言わず次は喉元まで喰らいつく」

ふっと、陳の微笑した声が車内に響いた。

「では、老大(ボス)。妨害とは一体? 女店主の方には直接の支援を断られたのでしょう。金オーナーを暴力で黙らせますか?」

「まさか。相手は一般人だからな。正攻法でまずは対抗する。その為にも、屋台のレンタル料と、芸能人関係者に裏から手を回す。黒華幇(ヘイホワバン)のフロント企業を使え」

これで後日、茉莉の元に何故か破格のレンタル料で屋台を貸す業者が現れる。
さらに、集客力のある芸能人が、オファーを受けてくれるという展開になるだろう。

茉莉には悪いが、俺も仕事だ。
これぐらいのことは手を回させて貰う。
ただ、いくら丁寧に下準備を整えても、祭りの準備が不十分なら金は稼げない。
そこは茉莉の奮闘に賭けたまでだ。

「はい。かしこまりました。そのように致しましょう」

陳は淡々と答えるだけで、慣れた手つきでパッドの画面を叩き始める。
きっと、フロント企業に指示を出す準備を始めているのだろう。

「なんだ。やけに素直に聞くじゃないか」

茉莉のことで陳から、肩入れし過ぎるなと一言二言、飛んで来ると思った。

「そうですね。父亲(父上様)と女性の趣味が全く一緒なので、血筋は争えない。仕方ないと思っているだけです」

「……」

車の走行音が微かに車内に響く。
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