極上チャイナマフィアは、健気なカフェ店主を逃がさない
「茉莉。おい、こんなところで寝るな」

私の微睡をやんわりと起こす声がしたが、今はもう少しだけ眠りたかった。

「うん……あと、五分……」

何しろ、お祭りが無事に終わってからも、後始末のアレコレや挨拶で、私はずっとお祭りの中にいるような忙しさだったのだ。
それもやっと終わって、休憩が出来た。
だから今は、もう少し休ませてと思った。
それでも私の微睡を終わらせようとする声は続く。

「店の扉は開けっぱなしだし、こんなに無防備に寝ていたら、襲われても文句は言えないぞ」

「……はい、だから、あとちょっとだけ……」

肩を優しく揺さぶられたが、私は目を閉じ続けた。ほっぺに感じる冷たいテーブルの硬い感触が、今は離れ難くて魅力的だった。
すると、ちゅっと、何か聞き慣れない音がした。

……ん。
今、額に柔らかい感触が。
え。ひょっとしてこれは……!

け、毛虫!?

いやぁぁ! とがばっとその場から頭を上げると、目を丸くしている凌さんがいた。

「え、えっと、」

状況が掴めないでいると、凌さんの優美な指が私の頬をむにっと摘んだ。

「いきなり声を出すから驚いた。早啊(おはよう)……とは言っても、もう夜だが。茉莉、今何時だと思っているんだ」

言われて、店の時計を見つめる。

「あ、もう、二十一時を回ってるっ!?」

時間を見て一気に意識が覚醒した。
そして目の前にいるのが、いつものスーツ姿じゃなくて、綺麗な白と黒のカジュアルコーデの凌さんで、思わず見惚れてしまった。

「起きたと思ったら、いきなり無言になるな。昼にも来たのに、店は早々に完売。店主は不在。夜に出直してみたら、今度は寝ているとは中々の仕打ちじゃないか」

ムニムニと頬を摘まれて、慌てて凌さんの手から逃げた。
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