極上チャイナマフィアは、健気なカフェ店主を逃がさない
「す、すみませんでしたっ。思った以上に好評で、あっという間に完売してしまいました。後片付けは両親にお願いして、人手が少ないところにヘルプに行ってたんです!」
「それで茉莉の後を追ってみたら、行く先々に居なかった訳か」
「はい、あちこちで呼ばれてしまって、本当にごめんなさい」
「俺を放り出す女なんて、茉莉ぐらいだ」
はぁっと深いため息を吐く凌さんは、なんだかちょっと可愛いと思ってしまった。
「私も凌さんに会いたかったです。でも、聞いて下さい。皆で頑張ったお祭りの売り上げは……」
「売り上げは?」
「およそ2.5倍! 純利益の計算はまだですが、売り上げ目標は達成しました!」
お祭りは大盛況だった。
たくさんの人に喜んで貰えたと凌さんに報告できて嬉しい。
「俺を放り出したんだ。売り上げぐらい達成して当たり前だ、と言いたいところだが」
凌さんがそっと、いつもより優しく私の耳に髪を掛けて、頬を撫でる。
んっ……やっぱりくすぐったい。
でも、今日はちょっと気持ちいいと思ってしまう私がいた。
「茉莉、良く頑張ったな。おめでとう」
すりっと頬をまた撫でられて、体温が上がって行く。胸もドキドキする。
でも、労わってくれたことが嬉しくて、「ありがとうございます」と、にっこりと微笑んだ。
「……なんだ。またキスされたいのか」
「キス?」
なんのことやらと思っていると、きゅうっと私のお腹が鳴いてしまった。
「わ、ご、ごめんなさいっ。まだちゃんとご飯食べてなくて」
恥ずかしくて、お腹を両手で押さえる。
すると凌さんは、やっぱりクスクスと笑い出した。
「さすが茉莉だ。敵わないな。よし、腹が減っているなら、今から俺と食事に行こう。なんでも好きなものを食べるといい」
「いいんですかっ!? って……私いま、シャツにジーンズで全然オシャレじゃないし、化粧も汗で落ちてしまって」
カッコいい凌さんの横を歩くには、少し引け目を感じてしまった。
一歩後ろに下がってしまいそうになったところ、凌さんがぐっと近づいてきて、私の耳に、
「──それがいい」
と、甘く囁いた。
「!」
また一段、体温が上昇する。
胸の鼓動が加速する。
何も言えないでいると、凌さんは「ほら、行くぞ」と私の手を引いた。
凌さんはお客様なのに。
こんなことをされては、意識してしまう。
きっと、私なんかよりもっと美人の大人の女性が似合うはずなのにと、思うけど。
私の唇は自然と「はい」と言葉を紡いでいたのだった。