極上チャイナマフィアは、健気なカフェ店主を逃がさない
「俺を頼れ」

「凌さん……?」

「俺にはこの問題を解決出来る力がある。普通のやり方じゃ、この店を荒らした奴はきっと捕まらない。捕まったとしても、茉莉に謝罪と補償をもたらすことは無いだろう」

「!」

頭の片隅でぼんやりと思っていたことを、突きつけられた気持ちになった。

「だから、茉莉。お前が俺を頼れば、相手の謝罪は望めないかもしれないが、それ以外の問題と憂いを全て取り払うと約束する」

頬に当てられた指先が、つつっと私の唇をなぞる。
琥珀色の瞳の視線も、言葉も、熱を孕んでいるように思えるのに、私に触れる指先は冷たかった。

あぁ、そうか。
この人は怒っているんだ。
私のために怒ってくれているのが分かった。
私の瞳から涙がぽろりと一粒溢れた。それは凌さんの優しい気持ちに触れて、心が解ける温かい涙だった。

「凌さんが……なんで、そこまで私にしてくれるの?」

凌さんは長いまつ毛をそっと伏せた。
そして深く深呼吸したあと、私を抱きしめる腕に力を込めて。

「茉莉が大事だから」

と、言った。
その言葉に私はまた涙した。

きっとこの人には何か、大きな秘密がある。
譲れない何かがある。
それが何かはわからない。
きっと簡単に言えない大事なことなのだろう。それと同じぐらい、私のことも大事だと言って貰えた気がした。

私はそっと凌さんの背中に手を回す。
一人では頑張ることに限界がある。誰かの手を借りてしか、立ち上がれないこともある。

だったら、私は凌さんの手を掴みたい。

「凌さん。お願いします。私を……助けて下さい」

「あぁ。茉莉は俺が守る。茉莉は何も心配することはない」

──はい。と、小さく頷き。
凌さんの腕の中で瞳を閉じる。
もし、この人が困ったことがあったら、その時は私が全力で手を差し伸べたい。
だから、早く私は元気にならなくちゃと、やっとそう思えるのだった。
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