極上チャイナマフィアは、健気なカフェ店主を逃がさない

七章

店の扉をしっかりと施錠したあと、事前に登録していた決済で、配車アプリからタクシーを呼んだ。すぐにやって来たタクシーに茉莉を乗せる。

夜の街を走る赤いテールランプが消えるまで、俺は店の前の路肩から動くことが出来なかった。

俺も一緒に同乗したかったが、泣き腫らして弱っている茉莉を自分のモノにしたい欲求を、これ以上抑えられる自信はなかった。
そして、その欲求を上回るほどに、怒りと冷静さが俺の体の中で龍の如く暴れ回っていた。
今なら頭上に輝く月ですら、噛み砕いてしまえると思ってしまう。

「はぁ……いっそ昂るな」

夜風に髪をそよがせ、俺の視界から完全にタクシーの痕跡が消えたことを確認してから、いつも陳が待っている送迎車へと足を動かした。
懐からスマホを取り出し、陳に電話を掛ける。ワンコールで陳が出た。

「陳。明日、鼠達を仕留める」

『はい。かしこまりました。この三ヶ月で鼠の巣や餌場は把握しましたので、よい頃合いかと』

陳は疑問を挟むことなく、淀みなく返事をした。話が早くて助かる。俺もカツカツと、夜のひと気のない道を歩く。

「鼠達のうち、あの金という鼠は、一般人に手を出したドブ鼠だ。あれは俺が直々に落とし前をつける」

──周防組のシマを食い荒らすのは、あくまで一般人のオーナー達。
だから、こちらは裏から手を回して相手の弱みを掴むという、優しい優しい手段をいくつも用意した。
しかし、茉莉の店を蹂躙した鼠は違う。

「店の壁の落書きだ。あの字の言い回しは、金の周りにいる不良崩れが使うものだ。それと、商店街の防犯カメラを洗え。店の周辺を出入りした車と人間、全部だ」

『承知しました。すぐに手配をしましょう』

すると、スピーカーからパッドを素早く叩く音が聞こえた。

結論は決まっている。
犯人は金が子飼いにしている不良崩れ。金で雇い、店を襲撃させたのだろう。
どうせ黒幕に期限内に商店街を掌握しろと言われていて、焦ったのだ。茉莉が抵抗したことが、引き金になったに違いない。
< 31 / 38 >

この作品をシェア

pagetop