極上チャイナマフィアは、健気なカフェ店主を逃がさない

八章

お店が荒らされてから一週間。
警察からの事件の進展はなし。
凌さんとは、あれから会っていなかった。土曜の夜も、凌さんは来なかった。

──お仕事が忙しいのかな。
そう思おうとしても、胸のどこかがちくりとした。

そんな思いを抱えながら、私はすっかり綺麗に片付いたお店の中にいた。
日曜日のお昼。こんな時間にお客様をお迎えしないで、一人でお店にいるだなんて不思議な気持ちだった。

まるでこれから新規オープンするお店のようだ。
近くにある椅子に腰掛ける。

お店の調度品や冷蔵庫など、衛生面を考えると全て破棄せざるを得なかった。
かろうじて残った物達は、今は大事に家に置いてある。なんとなく、この空っぽのお店に置いておきたくなかった。

ふぅっと、ため息をつく。
私は凌さんに「助けて」と願った。
凌さんに任せておけば、きっと何もかも魔法のように解決するだろう。強請ればお店も元通りにしてくれる気さえした。
それでいいじゃないか、ダメだと言う人はきっといない。
凌さんに甘えたらいいのだ──と、いっときそう思った。

しかし、そんなことをしたらきっと、凌さんが困ったときに、私が助けてあげられない。
力になれない。力になりたいと思った気持ちに、嘘は付きたくないと思った。

私と凌さん。
出会いは凌さんに助けて貰ったことだった。けれどその後は、持ちつ持たれつつの関係が心地よかった。
今思えば、凌さんは青年実業家という立派な立場で、見た目もすこぶる良くて、地位も私なんかと比べものにならないぐらい凄い人だ。
なのに、商店街の一角の小さな私のお店のお茶を、美味しいと認めてくれたのが嬉しかったのだ。
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