極上チャイナマフィアは、健気なカフェ店主を逃がさない

ハッとして茶器を見る。

「わ、お茶を蒸らし過ぎちゃう」

このお茶は茶葉が開く見た目も美しいお茶なのだ。それを凌さんにも見て欲しくて、お盆に乗せたセットをテーブルへと運ぶ。

「凌さん、お待たせしました。本日のお茶は西湖龍井(シーフーロンジン)。お茶請けにピーチパウンドケーキをどうぞ」

お盆の上の茶器達をそっと凌さんの前におくと、凌さんの琥珀色の目が嬉しそうに輝いた。

「ほう。茉莉、硝子の筒形茶器にした理由は?」

「西湖龍井(シーフーロンジン)の茶葉はお湯を入れると、茶器の中で笹の葉のように舞い踊ります。それを視覚的にも見られるようにと思い、筒形の茶器を選びました。おすすめポイントとしては、これは明前茶のものです。凌さんはいつもお疲れのようだから、春の清々しい香気を楽しんで欲しくて選んでみました」

「茉莉、厲害(リーハイ)(素晴らしい)。早速いただくとしよう。もう営業は終わったんだろう? 俺と一緒にお茶を楽しもう」

いつものようにお茶に誘ってくれて嬉しくなる。本来ならお客様と相席なんて出来ないけれど、今はもう営業時間は終わっているし、相手は凌さんだと思って、キッチンから自分のカップを持って来て素直に席についた。

「ありがとうございます。ではお茶をいただきますね」

「あぁ。そうだ。ケーキも分けよう。また、商店街の話を聞かせてくれ」

その言葉に頷く。
凌さんはこうして、お茶を飲みながらこの辺りの話を聞くのが好きだ。
何やら本国とは違う、日本の地域性や土地勘を学びたいということらしい。

それもあってこのお店にも通っているのだとか。
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