極上チャイナマフィアは、健気なカフェ店主を逃がさない
ふふっと笑い、温かなカップをテーブルにおくと、凌さんは琥珀色の瞳を静かに細めた。

「興趣是最好的老師……か」

「え?」

「日本で言うと『好きこそものの上手なれ』みたいな言葉だ」

「へぇ。凌さんに褒められると、学校の先生に褒められているみたいです」

「学校の先生ねぇ……俺は真逆の人間だよ、茉莉」

凌さんもお茶を飲み干し、静かに茶器を置いた。
そしてどこか試すような視線で私を見つめてくる。
琥珀色の艶やかな視線にそわそわしてしまった。

「そ、そうかな。でも凌さんは私を助けてくれたし、いい人じゃないのかな」

「ふぅん……いい人はこうして夜だけに来ないと思うけど」

凌さんが静かに呟いたあと、凌さんは長い腕を私へ伸ばした。
その指先が私の唇に触れた途端。
スマホの着信音が店に響いた。
思わず体をびくりと揺らしてしまう。

「あ、凌さんの電話かな。どうぞ出てください」

しかし、凌さんはスマホを取らず。
着信音はすぐに切れた。
凌さんは私の唇に伸ばした手を、ゆっくりと引っ込めた。

「この着信音は俺をお迎えに来た合図。さて、そろそろ仕事に行ってくる」

ガタリと席を立ち「今日も美味しかった。ご馳走様」と微笑む凌さん。

先ほどの艶やかな視線はどこにもなくて、返って私は揶揄われたのかと、変に胸がドキドキしてしまった。

「いえ、私こそ茶葉をありがとうございました。お仕事頑張ってきてください」

「あぁ、行ってくる。茉莉、またな」

凌さんは手をゆっくりと振って、お店を後にした。

お店に微かに残るエキゾチックな香りと、私の高鳴る胸の鼓動。

「もう。凌さんってば……いつも思わせぶりなんだから」

お客様じゃなかったら、変に意識してしまうところだった。危ない、危ない。
今の私は恋より仕事だ。

「さて、一息ついたし。元気が出たっ」

気合いも十分入って、残りの仕事を頑張ろうと思うのだった。
< 8 / 38 >

この作品をシェア

pagetop