強欲の公爵と呼ばれた元護衛騎士は、私と結婚するためだけに成り上がったらしい
ライカン・エスクードは自身の婚約パーティーとは思えない表情で立っていた。
「公爵、とても『婚約おめでとう』などと言えない顔をしているな」
仏頂面のライカンをものともせず声をかけられる人物は多くない。
「帝国の次なる太陽にご挨拶致します」
ライカンは深く頭を下げた。
「もうすぐ家族になるんだろう?堅苦しい挨拶はよせ」
帝国の皇太子。アーリアの兄、リヒル・ダビ・ジャラディアは笑顔で言った。微笑っているようで、探るような瞳をライカンに向けている。皇太子に限らず、最近は皆、ライカンを探るように見る。口にはしないが、皆同じ事を考えているようだ。
『何故、何の力もない第三皇女との婚姻を結ぶのか?』と。
遠慮なく聞いてきた父である前公爵には答えたが、わざわざ疑問に思っている全員に答えてやる義理はない。
答えたとて、豪快な父のように笑い飛ばす訳もなく、不快な返答が返ってくるだけだ。
「アーリア殿下をいずれ夫人に迎えるとはいえ、皇太子殿下に無礼な真似は出来ません」
ライカンは口元に笑みを浮かべた。
皇太子は眉を寄せる。
「ふむ‥‥。やはりアーリアがいなければ昔のままだな」
「どういう意味でしょう」
「公爵は何故妹を前にすると強張るのだ。そなたは今や帝国でも皇室の次に力を持っているだろう?嫌々妹を迎えるのは何故だ」
皇太子の瞳に怒りが見える。何に怒っているのか分からず、ライカンは戸惑った。
「嫌々‥‥とは。皇太子殿下には私が嫌そうに見えるのですか」
「そうとしか見えないな」