強欲の公爵と呼ばれた元護衛騎士は、私と結婚するためだけに成り上がったらしい
衝動的に出て来た割に、アーリアの頭は冴えていた。
侍女が外し忘れた耳飾りを売り、街娘風に衣装を着替えて広場の中央の噴水に座っている。
辺りは暗くなったものの、皇城のパーティーにあやかり、城下街でも屋台や店がまだ開いていた。
(まだ‥‥わたくしがいなくなったことに誰も気付いていないでしょうね)
寝る支度を済ませて侍女を下がらせたので、朝まで部屋にも誰も来ないはずだ。
(だから、最低でも朝までに帰れば騒ぎにはならないはずだわ)
このまま姿をくらますか、城に戻るか。
好奇心旺盛で、深窓の令嬢として育ってきた訳ではないので、皇女にしては身の回りの事もだいたい出来る。やろうと思えば、市井で暮らすことも出来るだろう。
そう。諦めればいいのだ。自分のことを厭う者など。
目からぽとりと雫が落ちる。
(そんなに嫌なの?ライカンを諦めることが)
泣いた自分に驚きながら、流れる涙を放置する。ふと、離れた距離だが、正面から大股で近付いてくる人物が視界に入った。アーリアの涙はすぐに引っ込んだ。
(な、なに?大きい。人さらい?)
アーリアは恐怖で竦む足を叩いて立ち上がり、踵を返した。路地に逃げ込もうとしたが、一足遅かった。腕を掴まれた。