縁綴り~御曹司は五年越しの妻を愛でる~
名家のご令嬢だった母は、大学卒業後、自社に就職した。

そしてそこで研究者として勤めていた父と恋に落ちたのだという。

性格も勤務態度も真面目で優秀な研究者だった父に、祖父も期待していたそうだ。

本来は喜ぶべき縁だが、緑松家には受入れられない現実があった。

母には諏訪元家に婚約者がいたのだ。

歴史ある大資本家一族である諏訪元家はホテル事業の諏訪元株式会社を主軸とし、百貨店、インテリア事業、飲食業、不動産事業などを傘下にした諏訪元グループを率いている。

日本を代表する巨大グループの売り上げは右肩上がりで、世界中に支社や関連企業がある。

緑松製薬も大企業とはいえ、諏訪元グループとは規模が違いすぎる。

そんな両家が結びついた理由は、諏訪元家が事業を興した創業者の時代にさかのぼる。


『現在諏訪元本社のある辺りの土地一帯は、当時大地主だった緑松家が元々所有していたんだ。当時の緑松家、諏訪元家当主は深い親交があって、諏訪元家がホテル事業の先駆けとなった旅館事業を興す際に土地や資金面で大きな協力をしたらしい』


『事業が軌道に乗るまでは土地の賃料の支払いや各種資金の返済も一切求めず、土地の一部も譲ったらしいわ。それからも経営に困ったときはなにかと力を貸していたそうよ』


祖父に続いて祖母が説明する。
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