縁綴り~御曹司は五年越しの妻を愛でる~
『恩の返しあいは終わりにしよう』


出会ったあの日、彼が口にした言葉。

彼が諏訪元家の息子でなかったなら。

私が緑松家の血縁者でなかったなら。

――私たちの縁は絶対に交わらなかったのに。


『結婚しよう』


迷いも情熱も恋情もない、淡々とした端的な求婚。

責任感の強い彼は諏訪元家を守るため、緑松(みどりまつ)家への恩を返す道を選ばざるをえなかった。

先祖が取り決めた大昔の約束なんて、知らぬ振りをすればよかったのに。


――私たちは五年前、夫婦になった。


一度も一緒に暮らしたことのない私たちに必要なものは〝結婚している〟事実。

形ばかりの、お互いをほとんど知らない、いびつな関係。


……もう十分、助けてもらった。


私の両親の責任を、彼がとる必要はない。


〝さよなら〟の時間は、少しでも早いほうがいい。
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