縁綴り~御曹司は五年越しの妻を愛でる~
父方の祖父母は私が物心ついた頃にはすでに亡くなっており、母方の祖父母には会った記憶がない。

一度母方の祖父母について尋ねたところ、私が大学を卒業したら教えると母に言われた。

そのときの母の面差しはとても真剣で、それ以上は聞けなかった。


「家族旅行は冬にしたらいいでしょ。お母さん、そろそろ準備しなきゃ間に合わないよ。お父さんと駅で待ち合わせでしょ? 私ももう出るから」


「あら、本当。もうこんな時間」


父はどうしても仕事の都合がつかず、午前中だけ出勤し、午後から休みを取っていた。


「じゃあね、行ってきます」


百五十七センチの身長に五センチはプラスできるスポーツサンダルを履いて玄関のドアを開けた途端、暑さに負けそうになる。

まだ七月に入ったばかりだというのに。

鎖骨くらいまでの焦げ茶色の髪を高い位置でひとつにまとめただけでは、あまり効果はなさそうだ。

眩しい日差しに母親譲りの丸い二重の目を少し細めた。


「気をつけてね、たくさんお土産買ってくるから」


振り返れば、母がふわりと柔らかく微笑む。

これが母と交わす最後の会話になるなんてこのときは思いもしなかった。
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