縁綴り~御曹司は五年越しの妻を愛でる~
――大学三年生の七月、両親が交通事故で亡くなった。
連絡が来た日のことはあまり覚えていない。
ただスマートフォンから響く声を大学から帰ってすぐの蒸し暑い自宅で機械的に聞き、両親にもう会えないという受入れがたい現実に悲しみと怖れで心が凍りついた。
私が贈った温泉旅行の帰り道の事故だった。
旅館からタクシーで最寄り駅に向かう山道の途中、運転手が突然意識を失ったらしい。
車の停止が間に合わず、カーブを曲がりきれずに崖から落ちて、亡くなったらしい。
後で聞いた話では、運転手は事故直前に脳梗塞を発症したそうだ。
これまで大きな病気もなく健康で、定期的に検診もきちんと受けていた方だったそうだ。