ベリーズカフェ15周年記念オリジナル短編『端的に言って恋だった』水守恵蓮/著

病院からの帰り道、私は書店に立ち寄って、歌舞伎や藤川園十郎に関する雑誌、書籍を片っ端から買い込んだ。

家に帰ると座椅子に座り、夕食に買ってきたパンを囓りつつ本のページを捲る。

改めて調べてみたら、歌舞伎の女形とは、私の付け焼き刃の知識なんかよりもっとずっと奥深かった。

単に女性の代わりを務めるという存在ではない。舞台上で女性らしく見せるための表現であり、理想の女性像を形にする演技様式なんだそうだ。

実際の女性を真似るのではない。首や手、指の動きで色気を表現し、姿形も女性らしく見えるように研究され尽くしていて、もはや本物以上に女らしく魅力的。

藤川さんの舞台写真を見た私が『親しみやすそう』と感じたのも、女形歌舞伎役者としての彼の地道な研究と努力の積み重ねがあってこそだろう。

『藤川園十郎』は藤川さんの仕事であって彼自身ではない、優花もそんなことを言っていたっけ……。


「藤川園十郎であるための、柏木志信さんの努力……」


無意識の呟きが胸にストンと落ちてきて、私はローテーブルの上でノートパソコンを起動させた。

WEBで検索したのは、藤川園十郎ではなく『柏木志信』。

この取材は、一歌舞伎役者をクローズアップしていては上手くいかない。

まず、彼自身を知ることが必要だ。

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