あなたが私を忘れても、わたしはあなたを忘れない。

*

図書館に着く。

私は自然と、昔よく座っていた窓際の席に向かった。

「ここ、座っていい?」

「うん」

向かい合わせに座る。

湊は買ったばかりの本を開いた。

しばらくして。

「……美月」

「ん?」

「この席」

「なに?」

「なんか、知ってる」

私は息を止めた。

「……本当に?」

「うん」

湊は周りを見渡す。

「ここに座って、美月と話してた気がする」

「……」

「でも、何を話してたかは分からない」

私は笑った。

「くだらない話ばっかりだったよ」

「例えば?」

「湊が先生に怒られた話とか」

「俺、怒られてた?」

「しょっちゅう」

「嘘だ」

「本当」

二人で笑った。

その瞬間。

湊が頭を押さえた。

「……湊?」

「大丈夫」

「本当に?」

「うん」

でも、明らかに顔色が悪い。

「ちょっと休む」

湊は目を閉じた。
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