あなたが私を忘れても、わたしはあなたを忘れない。
この子は、
湊の病気のことを知っている。
私が知らないことを、
たくさん知っている。
「じゃあ、また連絡するね」
「うん」
莉奈は歩き出した。
でも、
数歩進んだところで振り返る。
「美月ちゃん」
「はい?」
「湊のこと――」
少しだけ寂しそうに笑う。
「よろしくね」
そう言って、
莉奈は去っていった。
私はその背中を見つめていた。
「……誰?」
思わず聞いた。
湊は少し考えて、
「大学の友達」
と答えた。
「昔から仲良かったの?」
「うん」
「そうなんだ」
「でも」
湊が私を見る。
「今、一番会いたいと思ったのは美月だった」
「……え?」
「だから今日、連絡した」
私は何も言えなかった。
嬉しい。
でも同時に、
少しだけ怖い。
私が知らない三年間を、
あの子は知っている。
そして――
莉奈が湊を見る目を、
私は知っている。
あれは、
ただの友達を見る目じゃなかった。