あなたが私を忘れても、わたしはあなたを忘れない。

第5話「私の知らない君」

*

莉奈と別れた帰り道。

私は湊の隣を歩いていた。

さっきから、ずっと気になっていることがある。

「……ねえ、湊」

「ん?」

「莉奈ちゃんって、どんな子なの?」

湊は少し考えた。

「どんな子か……」

「うん」

「優しい子だよ」

即答だった。

「俺が病気になってからも、ずっと気にかけてくれてる」

「そっか」

「忘れっぽくなった俺に、何度も同じことを教えてくれたりさ。病院に付き添ってくれたこともある」

私は黙って聞いていた。

「俺が自分の家に帰る道を忘れたときも、迎えに来てくれたんだ」

「……そうなんだ」

知らなかった。

私がいなかった三年間。

湊がどんな毎日を過ごしていたのか。

どんなふうに苦しんでいたのか。

私は何も知らない。

「美月?」

「なに?」

「どうしたの?」

「ううん。なんでもない」

笑ってみせた。

「莉奈ちゃん、すごく優しいんだね」

「うん。感謝してる」

湊はそう言って笑った。

その笑顔を見て、私は気づいてしまった。

湊にとって莉奈ちゃんは、大切な人なんだ。

私が知らない時間を、一緒に乗り越えてきた人。

それは、私がどれだけ昔の思い出を持っていても、簡単には埋められない時間だった。

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