あなたが私を忘れても、わたしはあなたを忘れない。
それから三年。
私は湊のことを、少しずつ忘れようとしていた。
そして今日。
三年ぶりに、彼に会った。
駅前の小さなカフェ。
窓際の席に座っていた湊は、少し大人になっていた。
でも、すぐに分かった。
「あ……」
私が声をかけると、彼が顔を上げる。
目が合った。
三年ぶりだった。
心臓が、痛いくらいに跳ねた。
「……湊?」
彼は何も言わなかった。
ただ、じっと私を見ていた。
私は笑った。
泣きそうになるのを必死で我慢して。
「久しぶり」
すると湊は、少し困ったような顔をした。
そして――
「……ごめんなさい」
そう言った。
「え?」
「俺……あなたのこと、知ってる?」
時間が止まった。
何を言われたのか、理解できなかった。
「……何言ってるの?」
湊は申し訳なさそうに笑った。
「ごめん。俺……」
少しだけ間を置いて、
「人のことを、覚えていられなくなったんだ」
私は笑えなかった。
「……どういうこと?」
「病気なんだ」
湊はテーブルの上に置いた自分のスマートフォンを見つめた。