あなたが私を忘れても、わたしはあなたを忘れない。
画面には、たくさんの名前が登録されていた。

家族。

友達。

仕事関係。

そして――

私の名前。

『桜井美月』

その名前の横には、一枚の写真が設定されていた。

高校時代の私たち。

二人で笑っている写真。

私は震える声で聞いた。

「……これ、私だよね?」

「うん」

「覚えてないの?」

湊は首を横に振った。

「写真を見れば分かる。でも……」

「でも?」

「この人を好きだったっていう気持ちが、思い出せない」

胸の奥を、何かで強く握られたような気がした。

私はずっと、忘れられたことが悲しかった。

でも違った。

彼は私を忘れたんじゃない。

私との思い出そのものを、少しずつ失っていた。

「……じゃあ、どうして今日ここにいるの?」

そう聞くと、湊は少しだけ笑った。

「分からない」

「分からない?」

「この写真を見たら、どうしてもここに来たくなった」

「……」

「君は、ここに来たことある?」

私は答えられなかった。

だって、このカフェは――

高校三年生の冬。

私たちが初めて二人で来た場所だった。

そして湊は、そのことを覚えていない。

私は泣きそうになるのをこらえながら笑った。

「……ううん」

「そっか」

湊は少し安心したように笑った。

そして、私に聞いた。

「ねえ」

「……なに?」

「俺たちって、どんな関係だった?」

私はしばらく黙った。
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