あなたが私を忘れても、わたしはあなたを忘れない。
その頃。
莉奈は、二人が水族館にいることを知っていた。
湊から聞いたわけではない。
朝、莉奈がメッセージを送ったとき、湊はこう答えた。
【今日は美月と出かけるんだ】
たったそれだけ。
それなのに、莉奈は何度もその文章を読み返していた。
美月と出かける。
自分ではなく、美月と。
「……そっか」
莉奈はスマートフォンを置いた。
分かっていた。
湊が会いたかったのは美月だった。
自分は友達として、そばにいられればいい。
そう思っていたはずだった。
でも。
湊が美月に笑いかける姿を想像するだけで、胸が苦しくなった。
自分だって、何度も湊を支えてきた。
忘れられても、同じ話を何度聞かれても、そばにいた。
湊が自分の名前を思い出せなかった日も。
病院で一人、泣いていた日も。
ずっと。
「……私じゃ、だめなのかな」
誰もいない部屋で、莉奈は呟いた。
涙が頬を伝った。