あなたが私を忘れても、わたしはあなたを忘れない。
待ち合わせ場所には、すでに湊がいた。
私を見つけると、少し照れたように手を振ってくれる。
「美月」
「湊! 待った?」
「ううん。今来たところ」
そう言って、湊は私の顔をじっと見つめた。
「……何?」
「いや」
「何かついてる?」
「違う。今日、いつもより楽しそうだなって」
心臓が跳ねた。
「そ、そうかな?」
「うん。いいことあった?」
まさか、颯から電話があったなんて言えなかった。
隠すようなことではない。
でも、どうしてか、言葉にするのをためらってしまった。
「……湊に会えるから、かな」
そう答えると、湊は一瞬だけ目を丸くした。
それから、耳を赤くして笑った。
「……そういうこと、普通に言うんだ」
「え? だって本当だもん」
「……美月って、ずるいな」
「何それ!」
二人で笑い合う。
何気ない会話。
何気ない時間。
でも、私にとっては、何より大切なものだった。