あなたが私を忘れても、わたしはあなたを忘れない。
昼食を終えたあと、私たちは近くの公園を歩いた。
並んで歩く湊の横顔を、そっと見上げる。
こうしていると、時々、不思議な気持ちになる。
三年前も、こうして一緒に歩いていた。
学校帰りに寄り道をして。
コンビニで肉まんを半分こして。
将来のことを話して。
あの頃の私は、当たり前のように、明日も湊に会えると思っていた。
まさか三年後、もう一度恋をすることになるなんて。
しかも、相手は私のことを覚えていないなんて。
「……美月?」
「え?」
「何考えてたの?」
「んー……昔のこと」
湊は少しだけ視線を落とした。
「……俺といた頃?」
その声が、ほんの少し不安そうに聞こえた。
「うん」
正直に答える。
「楽しかったなって思ってた」
湊は黙っていた。
私は慌てて付け加える。
「でも、今も楽しいよ? 今の湊といる時間も、すごく好き」
すると、湊はゆっくり顔を上げた。
「……そっか」
そして、少し困ったように笑った。
「俺も、美月といると楽しい」
その言葉が嬉しくて、私は笑った。
けれど、その直後。
湊がぽつりとつぶやいた。
「……俺、いつか美月との思い出を全部忘れちゃうのかな」
足が止まった。
湊は前を向いたまま続ける。
「今は、こうして美月と会うのが楽しみなんだ。でも、いつかそれもわからなくなったら……」
「湊」
「美月が俺のことを好きでいてくれても、俺が美月を知らない人みたいに見たら……」
そこで、湊は言葉を止めた。
「……それって、すごく残酷だよな」
私は何も言えなかった。
大丈夫だよ。
そんなことないよ。
そう言ってあげたかった。
でも、簡単に否定することなんてできなかった。
湊自身が、一番怖いのだから。
だから私は、そっと彼の手を握った。