恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~
昼食後。
和香はたまたま通りかかった給湯室前の廊下で、帆高の姿を見かけた。
声を掛けようかと思った瞬間、彼の目の前に一人の若い女子社員が立っていることに気づく。
他部署の新入社員だろうか、見覚えのない彼女は顔を真っ赤にし、意を決したように声を張り上げた。
「好きです! 私と付き合ってください!」
ストレートな告白だった。
しかし、帆高の反応はあまりにも素っ気ないものだった。
「すみません、無理です。付き合っている人がいるので」
「……っ!」
まさかの現場を目撃してしまい、和香は慌てて踵を返した。
(久東くんってやっぱりモテるんだ……あんなの、日常茶飯事なのかな)
社内での彼の人気ぶりを再認識し、見なかったことにしようと足早に立ち去ろうとしたその時——突然、後ろから強く腕を引かれ、倒れそうになる。
「わっ……!?」
「和香さん」
見上げると、息を乱した帆高が立っていた。焦った様子で和香の腕を掴むその手は、なぜかじわりと熱を帯びている。その熱が全身に伝線していきそうになり、和香はそっと自分の手を重ねて彼の手を離させた。
「……見てましたよね」
「あー、ごめんね! たまたま出くわしちゃって……でも大丈夫、私は何も聞いてないから!」
和香が焦って手を振ると、帆高は心底不機嫌そうに目を細めた。苛立ちを含んだ鋭い瞳が、まっすぐに和香を捉える。
「ちゃんと断っているところを見せに行こうとしたのに、全然気にしてくれないんですね」
「……へ?」
「連絡しても適当なスタンプばかりだし」
「だ、だって……私たちは偽の恋人なんだから、そういうことに私が口を挟むのは違うでしょ」
「……」
帆高は返事をする代わりに、再び和香の腕をぐっと自分の方へ引き寄せた。至近距離で耳元に彼の温かい吐息がかかる。
「俺は嫌ですけどね。和香さんが他の男性と親しくしていたら」
「……っ!」
心臓が跳ね上がる。耳を離した帆高は、今度は試すような笑みを浮かべてこちらを見つめていた。
和香は慌てて顔を背ける。
「か、からかわないで……!」
「からかったことなんて一度もないです。俺はずっと真剣ですよ。……あ、そうだ。今週末、デートしましょう」 「……デート?」
「ご両親にご挨拶へ伺う前に、もう少し『恋人っぽいこと』をしておく必要がありますから」
困惑する和香の返事を待つこともなく、強引に約束を取り付けた帆高は、そのまま涼しい顔でフロアへ戻っていった。
和香はたまたま通りかかった給湯室前の廊下で、帆高の姿を見かけた。
声を掛けようかと思った瞬間、彼の目の前に一人の若い女子社員が立っていることに気づく。
他部署の新入社員だろうか、見覚えのない彼女は顔を真っ赤にし、意を決したように声を張り上げた。
「好きです! 私と付き合ってください!」
ストレートな告白だった。
しかし、帆高の反応はあまりにも素っ気ないものだった。
「すみません、無理です。付き合っている人がいるので」
「……っ!」
まさかの現場を目撃してしまい、和香は慌てて踵を返した。
(久東くんってやっぱりモテるんだ……あんなの、日常茶飯事なのかな)
社内での彼の人気ぶりを再認識し、見なかったことにしようと足早に立ち去ろうとしたその時——突然、後ろから強く腕を引かれ、倒れそうになる。
「わっ……!?」
「和香さん」
見上げると、息を乱した帆高が立っていた。焦った様子で和香の腕を掴むその手は、なぜかじわりと熱を帯びている。その熱が全身に伝線していきそうになり、和香はそっと自分の手を重ねて彼の手を離させた。
「……見てましたよね」
「あー、ごめんね! たまたま出くわしちゃって……でも大丈夫、私は何も聞いてないから!」
和香が焦って手を振ると、帆高は心底不機嫌そうに目を細めた。苛立ちを含んだ鋭い瞳が、まっすぐに和香を捉える。
「ちゃんと断っているところを見せに行こうとしたのに、全然気にしてくれないんですね」
「……へ?」
「連絡しても適当なスタンプばかりだし」
「だ、だって……私たちは偽の恋人なんだから、そういうことに私が口を挟むのは違うでしょ」
「……」
帆高は返事をする代わりに、再び和香の腕をぐっと自分の方へ引き寄せた。至近距離で耳元に彼の温かい吐息がかかる。
「俺は嫌ですけどね。和香さんが他の男性と親しくしていたら」
「……っ!」
心臓が跳ね上がる。耳を離した帆高は、今度は試すような笑みを浮かべてこちらを見つめていた。
和香は慌てて顔を背ける。
「か、からかわないで……!」
「からかったことなんて一度もないです。俺はずっと真剣ですよ。……あ、そうだ。今週末、デートしましょう」 「……デート?」
「ご両親にご挨拶へ伺う前に、もう少し『恋人っぽいこと』をしておく必要がありますから」
困惑する和香の返事を待つこともなく、強引に約束を取り付けた帆高は、そのまま涼しい顔でフロアへ戻っていった。