恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
「……海のことで本当に何もないなら、帰ります。ごちそうさまでした。今回は私がお支払いしますので」

 和香はナプキンで口元を拭うと、きっぱりとした口調で席を立とうとした。
だが、神楽坂はグラスを傾けたまま、さらりと告げる。

「それなら、既に支払っているので大丈夫ですよ」
「え、!?」
また、勝手に借りが出来てしまった。
「でも、さすがに二回連続でごちそうになるのは…」
「そう思うのであれば、また私と会ってくれますか?」
「それは出来ません」

即座に拒絶してみせると、神楽坂は可笑しそうに目を細めた。

「あはは、相変わらず頑固で、こっちに少しも靡かないなぁ」

 そうは言うものの、神楽坂はこの不毛な押し問答そのものを楽しんでいる ようにすら思えた。

 彼にとって、自分の思い通りにならない和香との時間は、どこか新鮮なのかもしれない。
 高級感のある重厚な扉を押し、店を出て初めて、自分が一時間半もその店内にいたことを知った。
 ビルを出ると、夜のひんやりとした風が火照った頬を静かに撫でていく。

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