恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
 海から連絡が来たのは、翌朝のことだった。

『神楽坂さんって知ってる?』

 ディスプレイに表示されたそのメッセージを目にしたのは、ちょうど出勤途中の電車内だった。
 山積みに残った仕事を取り片付けるため、和香はいつもより早い時間に出勤することにし、帆高よりも先に家を出ていた。
 一緒に家を出ようとした彼を押し止め、代わりに合鍵を渡すと、帆高はどこか不満そうにしながらも頷いてくれた。自分の都合で早朝から付き合わせるわけにはいかなかったからだ。

 だが、最寄り駅のホームに降り立った瞬間、海からのメッセージを確認した和香の口から思わず小さな悲鳴が漏れた。

「神楽坂さん……海に接触したの…?」

 頭の中が真っ白になる。
親に海の居場所が知られるのも、もはや時間の問題だ。和香は立ち尽くし、深い落胆に打ちひしがれた。

―これで、もう逃げられない。

 政略結婚を受け入れざるを得ない状況に追い込まれつつあることを覚悟した。
 神楽坂が親に海の居場所を伝えれば、両親は間違いなくこう突きつけてくるだろう。
―交換条件だ、と。

 海の駆け落ちを見逃す代わりに、神楽坂と結婚すること。
そして、今の会社を正式に辞め、実家の会社に入社すること。それが突きつけられるであろう条件だった。
 実は、帆高にはまだ会社を辞める覚悟を固めていることを打ち明けられていない。
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