恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
―昼休み

 和香はまだ今朝のことを引きずっていた。
昼食も無理やりうどんを胃の中に押し込む。
 異変を感じたのは、出社して間もなくのことだった。
フロアに足を踏み入れデスクへ向かう途中、すれ違う社員たちの視線がいつもと違う。
 ひそひそと囁き合う声、蔑むような目線、嘲笑を含んだ冷ややかな空気を気づかないわけがない。
和香が近づくと、彼らは示し合わせたように一斉に口をつぐんだ。

(……なにか、あったのかな)

 不気味な違和感に背筋が寒くなる。
自分のデスクにつき、パソコンを立ち上げた和香は、社内メールに差出人不明で何かが届いていた。
 そこには、今朝、車道脇で神楽坂に無理やり抱きしめられた自分の姿が、鮮明な画像として添付されていた。

『お上品な顔して裏では御曹司とドロドロ?』
『男をたぶらかして何股してるんだろう?』
という文章もついていた。

 頭が真っ白になり、指先が冷たく冷えていく。

「和香さんどうしたんですか?」
「…あなたが、やったの?」
「何のことですか?」

 高飛車な声とともに現れたのは、ののかだった。
腕を組み、勝ち誇ったような笑みを浮かべながら和香のデスクへと歩み寄ってくる。
 実は直前、ののかはこの写真を直接帆高に見せ、和香を失脚させようと目論んでいた。だが、帆高は写真を見ても顔色ひとつ変えず、「くだらない」と一蹴して取り合わなかった。
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