恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
 神楽坂を見送った後、二人が再び応接間へ戻ると、そこには先ほどまでの高圧的な態度は見る影もなく、震えながら深々と頭を下げる両親の姿があった。
そうするしか、彼らには残された道がなかったようだ。

「……む、娘を……どうか、よろしくお願いいたします…」

 父親の擦れきれた声が静まり返る部屋に響く。
あんなにも青ざめた顔の両親を見たのは生きてきて初めてだったが、和香の胸には欠片ほどの憐れみも湧いてこなかった。自らの強欲さで招いた、自業自得の結末なのだから。

 その後、帆高のバックアップのおかげで、妹の海も駆け落ちなどという過酷な道を選ばずに済み、無事に家へと戻ることができた。
そして両親は、海の交際についても二度と口出しできなくなり、認めざるを得なくなった。

♢♢♢

 それから、数か月後。
社内での評価と実力が認められた帆高は、和香と同じ部署を離れ、経営企画部へと異動した。
 現在は二十代にして部長の肩書を背負い、会社の未来を牽引する中心人物として多忙な日々を送っている。
 本来なら社内の経営陣にも様々な派閥が存在し、後継者争いが絶えないはずなのだが、実績とカリスマ性を兼ね備えた帆高を次期後継者とすることに対しては、誰一人として異論を唱える者はいない。

そんな怒涛の日々が一段落したある日…―。
和香は何故か、都内でも有数の高級フレンチレストランへと呼び出されていた。しかも平日の会社終わりという、なんとも唐突なタイミングだ。

(……急に高級レストランなんて、どうしたんだろう?)

 不思議に思いながら首を傾げ、指定されたお店へ小走りで駆けつけると、店内の一角、夜景が一望できる絶景の窓際席に、すでに帆高が腰掛けていた。

< 155 / 190 >

この作品をシェア

pagetop