恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~
「付き合っているつもりでいてもらわないと、和香さんのご両親にすぐ見破られてしまいますよ」
「…それは、そうだけど。社内の人に本当につき合っていると思われたら、それはそれで困るのよ。ほら……君、すごくモテるし」
 
 周囲からの妬みや噂話に巻き込まれる恐怖を誤魔化すように、和香は困惑を交えて訴えた。
だが、帆高の表情はぴくりとも動かない。彼はゆっくりと体を前傾させると、テーブル越しに距離を詰めてきた。

「それが理由だとすれば、何の問題もありませんよ」

 低く落ち着いた声が、周囲の喧騒をすり抜けて和香の耳腔を直接揺らす。

「俺が好きなのは、和香さんなので。それ以外の人間の言うことなんて、どうでもいいじゃないですか」
「……っ」

 喉の奥が乾き、和香はゴクリと生唾を呑み込んだ。寸分の揺らぎもない真剣な双眸が、至近距離でまっすぐに和香の瞳を映し出している。

―俺が好きなのは、和香さんなので。

(これは……“恋人のフリ”を完璧に演じるための言葉だよね?そうだよね…?)

 声に出して確かめてしまえば、この微妙な均衡が崩れてしまいそうで、喉まで出かかった問いかけは熱い塊となって胸の奥に押し戻された。
 和香はただ、心臓の脈打つ音を聞きながら、彼の熱を帯びた視線に射抜かれたまま固まることしかできなかった。

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