恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
 あの日着ていた可憐なピンクのワンピースとは打って変わり、今日の彼女は仕立ての良い白いパンツスーツ姿。栗色の髪はハーフアップに整えられ、メイクも先日の可憐な装いより幾分しっかりと落ち着いた印象に仕上げられている。
 明らかに自分を目がけて歩み寄ってくる彼女の目的が“自分自身”であることは一目瞭然だったが、なぜここにいるのか、どうやって会社帰りのルートを知ったのか、疑問符ばかりが脳裏を駆け巡る。

「ど、どうしたんですか…?」
「こんばんは。急に押しかけてしまってごめんなさい」

 菜子はぺこりと丁寧に頭を下げると、申し訳なさそうに眉尻を下げて重ねて謝罪した。

「……帆高くんのことで、どうしても和香さんにお話があって。立ち話も何ですから……どこか場所を変えてお話しできませんか?」
「……ええ、わかりました」

 彼女の切羽詰まった目元と切実な声色を前にすると、とても“断る”という選択肢は選べなかった。
それに…―和香はそっと自分の左手に視線を落とす。
 そこには、帆高から贈られた指輪が美しく輝いていた。

(私はもう、帆高くんの妻なんだから……何も怖がる必要はない)

 自分を鼓舞するように胸を張り、二人で駅前にあるチェーン店のカフェへと入った。
 菜子のような華やかなお嬢様が絶対に入ったことのないような庶民的なお店を選んでしまい、「もっと静かな場所を探せばよかったかな」と申し訳なく思っていた和香だったが、

「わあ……!私、ここ一回来てみたかったんです。ここのココア、すごく美味しいって評判ですよね!」

 メニュー表を見ながら無邪気にパッと目を輝かせる菜子の姿に、和香は「よかった」と胸を撫で下ろした。


< 171 / 190 >

この作品をシェア

pagetop