恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~
だが、彼の仕事ぶりは完璧そのものだ。
数字に滅法強く、通常なら一週間はかかるような緻密な分析レポートを一日足らずで提出してくる。英語はもちろんのこと、他にも複数の言語を流暢に操るなど、底が知れないスペックの持ち主だった。
そんな彼が、どこから聞いていたのか真っ直ぐな瞳を和香に向けている。

「何かありましたか?」
「ううん、何もないよ」
「すみません。実は途中から、電話の内容が聞こえてしまいまして」

やってしまった、という思いで和香は「そっか」と短く吐き捨てた。

「口、硬そうだもんね、久東くん。……実はね、私、水瀬製薬の社長の娘なの。ここに入るのも猛反対されたんだけど、押し切って入社したの。でも、今度は見合いの話が凄くて……」
「お見合い、されるんですか」
「見合いっていうか…政略結婚だよね。本人の意思なんて無視で進められてて。まあ、仕方ないのかな…」

 溜息をついた瞬間、帆高がすっと距離を詰め、和香の細い手首をぐっと掴んだ。

「えっ……!?」
「それなら、いい案があります」
「いい……案?」
「水瀬さんは嫌なんですよね、その結婚」
「そ、そりゃあ……嫌だけど」

 至近距離で見上げる帆高は、背が高く、恐ろしいほど整った顔立ちをしていた。
 綺麗な二重まぶた、すっと通った高い鼻筋。高い身長に反して驚くほど小さな顔と長い手足は、まるでモデルそのものだと思わされる。握られた手首から、熱が伝わってくる。
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