恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~
「僕と付き合っていることにしましょう。それも、真剣交際ということで」
「え……!?な、何言ってるの…?」
「ちょうど僕も似たような状況でして。『そろそろ相手を決めろ』とうるさく言われていたんです。そういうのは面倒なので、良ければ僕と『仮の恋人』になりませんか」
「む、無理だよそんなの! ダメだって! もし急に、久東くんに本当に好きな人ができたらどうするの!?」
「それは絶対にないですから、安心してください」

迷いなく断言する帆高の言葉に息をのむ。

「もし万が一そうなれば、この関係は解消すればいい。いわゆる『利害の一致』です。水瀬さんは無理やり結婚させられそうになっていて、それを阻止したいけれど手札がない。なら、両親に『真剣交際している恋人がいる』と伝えてみるのはどうですか?」
「そんなことで、うちの親が諦めるとは思えないけど……」
「でも、やってみないと分かりませんよ。彼氏として、僕が水瀬さんのご両親へ挨拶に行きますし」

 なぜ、そこまでしてくれるのだろう。
帆高も親から結婚を強制されていて、和香という恋人の存在をアピールすれば毒牙から逃れられる、ということなのだろうか。

 逡巡の末、和香は静かに首肯した。
今、自分にはこの切り札以外に打てる手がない。

「……分かった。じゃあ、助けてもらおうかな」
「良かったです」

 そう言った帆高の唇が、どこか満足そうに、嬉しそうに弧を描いた。
仕事は非常に忙しい。
 繁忙期ともなれば、連日ほぼ残業続きだ。時差のある国々とのオンライン会議も多く、よほど心身ともにタフでなければ到底続けられないと最近は痛感している。
とはいえ、和香は体力には自信がある方だし、何よりこの仕事が好きで楽しかった。

(……それにしても)

 チラリと、先ほど非常階段で“ありえない提案”をしてきた張本人に視線を移す。
 フロアに戻ってからの帆高は何事もなかったかのように、淡々とPCに向かってキーボードを叩いていた。その切り替えの早さに、少し拍子抜けしてしまう。
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