恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
 長い廊下を歩く。
久しぶりに足を踏み入れた実家だというのに、安堵できる場所などどこにもない。
 自分はこの家を少しも好きになれないのだと、改めて冷酷な事実として実感させられた。
 重厚な玄関を抜け、屋敷の敷地を出て少し歩いたところで、不意に温かい体温が手に触れた。
帆高が、冷たくなった和香の指先をそっと握りしめていた。

「……あ、」
「お疲れ様でした。あの感じじゃ、なかなか難しそうですね」
「うん。今日は……本当にありがとう。やっぱり、あの二人を説得するのは難しいみたい。あと、言い忘れてたんだけど」

 和香はぴたりと足を止めた。 それに引っ張られるようにして、帆高も立ち止まり、振り返る。

「今日で……この“恋人ごっこ”は、終わりにしてほしいの」
「……なぜですか」

 帆高の低く、少し擦れた声が夜風に混ざって和香を射抜く。

「もう、恋人のフリをしてもらう必要がなくなったから。最初はもしかしたら、なんて甘い願望もあったけれど……やっぱり無理みたい。私の本当の目的は、妹の駆け落ちを手引きして、無事に完了させることだったの。それから、できることなら、政略結婚は嫌だったけれど……でも、仕方ないよね。ごめんね、私なんかに利用させて」

 無理に口角を上げ、引き攣った笑みを浮かべて見せる。 けれど、彼は笑い返してなどくれなかった。
 それどころか、和香の真意を削り出すかのように、深くて暗い瞳をまっすぐに向けてくる。

「和香さんは、それでいいんですか」

 帆高が一歩踏み込み、和香の顔を覗き込んできた。
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