恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
 マンションの重いドアが開くと、吸い寄せられるようにして二人はそのまま寝室へと移動する。
 和香は今年で三十になる。男女が夜、二人きりで同じ部屋に入るという意味を、知らないわけがない。 分かっているのに、いざその時を迎えると、心臓が口から飛び出しそうなほど緊張してしまう。

「……あー、えっと……そうだ、シャワーに……っ」

 帆高の顔を正視することができず、引き攣った声で早口に言葉を吐き出した。
せっかく寝室まで来たというのに、ぴたりとドアの前に立ち尽くしてしまう。 部屋はそこそこ綺麗に掃除してあるはずだが、あの完璧な帆高の家と比べたら“汚い”と認定されてもおかしくないかもしれない…―なんて、心底どうでもいいくだらない思考が頭の中を駆け巡る。

「浴びたいなら、待ってますよ」

 落ち着いた声に促され、和香は恐る恐る帆高の顔を見上げた。
その瞬間、視線が絡み合う。
 彼の瞳には、これまでに見たこともないほどの深い熱が宿っていた。その無言の熱量に引き寄せられるようにして、自然と二人の距離がゼロになる。

 帆高の手が和香の頬を包み込み、貪るようにして何度もキスを重ねてきた。

「んっ…―、っ、ふ」

 先ほど路上で交わした、優しくて切ない雰囲気のそれとは全く違っていた。
深く、激しく、まるで激しい濁流の中に呑み込まれていくようなキス。
 角度を変え、何度も深く唇を奪われるたびに、和香はあまりの甘さと苦しさに自然と眉間にシワを寄せ、彼の胸元にすがりついた。


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