恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
 甘い余韻の残る寝室をあとにし、和香は服を着替えてリビングルームへと向かった。
 キッチンに立ち、手際よく簡単な朝食の準備を始める。
トースターから香ばしい匂いが立ち込め、手作りのスープから湯気が上がった。
テーブルに着いた帆高は、目の前に並べられた朝食を見つめ、どこか心底満足そうに目を細めて笑っていた。

「和香さんの手料理、食べられるなんて夢みたいです」
「…そんな大層なものじゃないよ。冷蔵庫にあったもので作っただけだから」

 照れくささを隠すようにスープを一口口に含んだ和香だったが、胸の奥にすっと冷たい澱のような不安が広がっていくのを感じていた。

 昨夜の熱や、今朝交わした甘い言葉は間違いなく本物だ。
けれど…―だからこそ、現実の問題が重く肩にのしかかってくる。
和香はスプーンを置くと、意を決して帆高の瞳を見つめた。

「あのね、帆高くん…やっぱり、私の実家のことなんだけど」
「はい」
「うちの両親は…絶対に帆高くんとの交際を認めないと思う。あの家は、昔から“家柄”や“肩書き”ばかりを気にするの。このまま私と一緒にいたら、神楽坂さんやうちの実家から、帆高くんに嫌がらせや圧力がかかるかもしれない……」

 一度は覚悟を決めて両親に反発したものの、実家の冷酷さを誰よりも知っているのは和香自身だ。自分の我通しのせいで、将来ある素晴らしい後輩のキャリアや人生を傷つけてしまうことだけは、どうしても避けたかった。

「私に関わったせいで、あなたに迷惑がかかるのだけは……本当に嫌なの」

 必死な思いで訴える和香に対し、帆高は焦る様子もなく、静かにコーヒーカップをテーブルに置いた。

「心配いりませんよ。そんなこと」

 淡々と、けれど寸分の揺らぎもない声だった。
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