恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
 午後になり、打ち合わせの予定が入っている23階の会議室へと向かった。
指定された部屋番号を確認し、

(ああ、あそこは防音効果が高くて、二人で使うにはちょうどいいこじんまりとした部屋だな)

と思い出しながら足を進める。
 ののかとの仕事の打ち合わせだ。和香はノックもせず、そっとドアの取っ手を回して開けた。

だが―…。

 わずかに隙間が空いた瞬間、室内からガタッと大きな物音が響き、和香は思わず足を止めた。

「……っ、」

 隙間から目に飛び込んできた光景に、全身の血がスーッと引いていく。
室内で、男女が重なり合うようにしてキスをしていた。
見間違うはずもない。その姿は…帆高と、ののかだった。
 男の方は和香に背を向けているため、どんな表情をしているのかまでは分からない。
けれど、重なった肩の向こうから、ののかの綺麗で大きな瞳とバッチリと視線が絡み合った。

 ののかは、和香の存在に気づきながら、勝ち誇ったように、冷たく瞳を細めて微笑んでいた。

「……っ」

 呼吸が止まる。和香は咄嗟に目を逸らすと、何も見なかったことにするようにドアを閉じ、逃げるようにその場をあとにした。

 なぜ、あの場所に帆高がいるのか。 なぜ、二人がキスなんてしていたのか…―。

 頭の中が真っ白になり、何一つ理解できない。
けれど、考えれば考えるほど、脳裏に焼き付いたあの光景が鮮明に浮かび上がり、胸が張り裂けそうなほどの激しい痛みに襲われた。
押し寄せる涙を必死で堪えながら、和香はあてもなく廊下を走り抜けていた。

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