恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~
ビルを出て、二人は並んで夜の飲食店街へと歩き出した。
「普段はどのあたりで食べるんですか?」
「うーん、基本は自炊なんだけど……外食するなら、チェーン店の焼き鳥屋とかかなぁ」 「意外ですね。水瀬さんがそういうお店に行くなんて」
「ふふ、やっぱり誰も“社長令嬢”だなんて思わないでしょ?私にはお嬢様らしい品なんてないみたい」
「そんなことないですよ。僕は最初からずっと思っていましたよ。きっと、すごく育ちが良い方なんだろうなって」
「そう?…ありがとう」
和香は少し照れくさそうに笑いながら、普段からよく利用している大衆焼き鳥チェーン店へと帆高を案内した。
店内に入ると、威勢の良い店員の掛け声と香ばしいタレの匂い、そしてガヤガヤとした客たちの熱気が二人を包み込む。和香はこの賑やかさが好きだった。
幼少期、実家での食事といえば、敷居の高い高級レストランか専属シェフが振る舞う料理ばかりだった。
けれど、小学生の頃にたまたま友人の家でご馳走になった家庭料理の美味しさに、和香は幼心に大きな衝撃を受けたのだ。
一流の食材で作られた料理よりも、楽しく笑い合いながら食べる食事の方がずっと美味しい。
実家の食卓はいつも静まり返り、カトラリーが皿に当たる硬質で冷たい音ばかりが響いていた。交わされる会話といえば教育方針か会社の業績のことばかりで、他愛のない日常の会話をした記憶なんて一度もなかった。
その反動なのか、大人になってからの和香は、こうした庶民的な大衆居酒屋の温かい雰囲気を好むようになったのだ。
「奥の席へどうぞー!」と通され、和香は手慣れた手つきで適当に焼き鳥とビールを注文する。
向かいに座る帆高を見る。スーツを着こなした完璧なビジュアルの彼は、どう見てもこの赤提灯の雰囲気に浮いていた。
(……でも、案外嫌そうじゃないかも)
料理を待つ間、会話は驚くほどスムーズ弾んだ。
それは和香がまだ、彼を“社内の頼もしい後輩”としてしか認識していなかったからだ。
「久東くんって、こういうお店にも来るの?」
「まあ、来ますよ」
「本当に?」
「ええ、来ますよ」
クスクスと苦笑する帆高の口角が、自然な弧を描く。
「普段はどのあたりで食べるんですか?」
「うーん、基本は自炊なんだけど……外食するなら、チェーン店の焼き鳥屋とかかなぁ」 「意外ですね。水瀬さんがそういうお店に行くなんて」
「ふふ、やっぱり誰も“社長令嬢”だなんて思わないでしょ?私にはお嬢様らしい品なんてないみたい」
「そんなことないですよ。僕は最初からずっと思っていましたよ。きっと、すごく育ちが良い方なんだろうなって」
「そう?…ありがとう」
和香は少し照れくさそうに笑いながら、普段からよく利用している大衆焼き鳥チェーン店へと帆高を案内した。
店内に入ると、威勢の良い店員の掛け声と香ばしいタレの匂い、そしてガヤガヤとした客たちの熱気が二人を包み込む。和香はこの賑やかさが好きだった。
幼少期、実家での食事といえば、敷居の高い高級レストランか専属シェフが振る舞う料理ばかりだった。
けれど、小学生の頃にたまたま友人の家でご馳走になった家庭料理の美味しさに、和香は幼心に大きな衝撃を受けたのだ。
一流の食材で作られた料理よりも、楽しく笑い合いながら食べる食事の方がずっと美味しい。
実家の食卓はいつも静まり返り、カトラリーが皿に当たる硬質で冷たい音ばかりが響いていた。交わされる会話といえば教育方針か会社の業績のことばかりで、他愛のない日常の会話をした記憶なんて一度もなかった。
その反動なのか、大人になってからの和香は、こうした庶民的な大衆居酒屋の温かい雰囲気を好むようになったのだ。
「奥の席へどうぞー!」と通され、和香は手慣れた手つきで適当に焼き鳥とビールを注文する。
向かいに座る帆高を見る。スーツを着こなした完璧なビジュアルの彼は、どう見てもこの赤提灯の雰囲気に浮いていた。
(……でも、案外嫌そうじゃないかも)
料理を待つ間、会話は驚くほどスムーズ弾んだ。
それは和香がまだ、彼を“社内の頼もしい後輩”としてしか認識していなかったからだ。
「久東くんって、こういうお店にも来るの?」
「まあ、来ますよ」
「本当に?」
「ええ、来ますよ」
クスクスと苦笑する帆高の口角が、自然な弧を描く。