恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
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side神楽坂瑠衣

 神楽坂は、何年ぶりかも思い出せないほど久しぶりに、吸い込まれそうな夜空の美しさをじっと見つめていた。

「こんなにも、綺麗だったか」

 静寂に包まれた街の上空には雲一つなく、澄み渡るような夜空が広範囲に広がっている。

『結婚っていうのは、別に今の時代、無理にしなくてもいいものなんです!独身を貫く生き方もアリだし、生涯を共にするけれど籍は入れない事実婚だって自由。つまり、選択肢が無限にある時代なんです!結婚しなくてもいい時代だからこそ…結婚というものに価値があるんですよ』

 青臭い、と笑い飛ばすのは簡単だった。
自分にとって結婚など、互いの家柄や事業規模を補強するための“ただの紙切れ一枚の契約”でしかない。明確な利害の一致とメリットがあるからこそ、人は婚姻届という契約書を結ぶのだと信じて疑わなかった。

 だが…―自分と同じような名家の重圧の中で育ったはずの彼女は、自分とは完全に真逆の価値観を、その瞳を真っ直ぐに輝かせながらぶつけてきた。
それが異様なほど新鮮で、恐ろしいほど自分を惹きつけて止まない。

「結婚の価値、ね……。好きな人と、か。……ははっ」

 静かな夜の街に、乾いた笑い声が短く響いた。
だが、去り際に和香が見せた、どこか誇らしげで、けれど少しだけ照れたようなはにかんだ笑みが、瞼の裏から離れてくれない。
 もっと彼女を知りたい。もう少しだけ、あの熱を帯びた瞳と時間を共有したかった…、などと、自分らしくもない感傷的な思考が脳裏を掠める。
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