恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
 帆高のマンションに到着し、緊張した手つきで合鍵を差し込んでドアを開けると、ちょうどポケットの中のスマートフォンがブッと短い振動を刻んだ。画面を見ると、帆高からのメッセージが入っていた。

『勝手にお風呂に入っていていいですからね。夕飯、一緒に食べますか?』

 画面越しにも彼の気遣いが伝わってきて、和香はすぐに指を動かして返信を打った。

『何か作って待ってるね』

 一人で彼の部屋で待っているのもソワソワして落ち着かない。
和香は一旦部屋を出ると、マンションのすぐ近くにあるスーパーへと買い物に向かった。
 何を作ろうかとしばらく棚を眺めて考えたが、今日は精神的に疲れたせいか、無性にお腹が空いていてガッツリとしたものを食べたい気分だった。

(カレーなら失敗も少ないし……帆高くんが遅くなっても、温め直せばすぐに食べてもらえるよね)

 そう思い立ち、カレールーと野菜、お肉を買い込んで彼の部屋のキッチンへと戻った。
 男一人暮らしとは思えないほど綺麗に整理されたキッチンを使わせてもらい、トントンと野菜を刻む音を響かせながら手際よく料理に取り掛かる。

「……できた」

 甘く香ばしいカレーの匂いが部屋中に広がり、和香はふっと胸を撫で下ろした。

(橋川さんと二人きりで残業してるんだよね……)

 という一抹の不安を胸の奥に抱えながらも、カレーの鍋に蓋をし、彼がいつでも入れようにとお風呂を沸かして、静かに帆高の帰りを待っていた。
だが―…。
21時を過ぎても、22時を過ぎても…帆高からの連絡は一向に入らなかった。

(……やっぱり、あの案件、すごく大変なのかな……)

 空腹に耐えかねた和香は、先に一人で小さく「いただきます」と呟いて夕食を済ませることにした。
片付けを終え、広いリビングのソファに深く背を預ける。

(……泊まるにしたって、着替えもスキンケア用品もないし……どうしよう……)

 彼の部屋に満ちる心地よい匂いと、一日中の緊張と疲れがどっと押し寄せてくる。
 膝を丸めてソファに横になっていると、抗いがたい猛烈な眠気が襲いかかり、和香はそのまま静かに意識を手放していった。

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