春雷ブロッサム
この角度からでも分かる整った顔立ちに、クールなのに温かさを感じる独特な雰囲気。
彼が放つオーラは、自然と周りの目を惹いてしまうような爽やかさと男性の色気を兼ね備えているような気がした。
「でも、本当に良かったんですか?」
突然の彼からの質問にわたしは「えっ?」と間抜けな声を出す。
それでも彼は「さっきのあいつ。放置しといて良かったんですか?」と、わたしが遭った被害について心配してくれたのだ。
「大丈夫です。わたしみたいなおばさんが被害に遭うなんて、滅多にある事じゃないですから。あの人もきっと気まぐれであんな事しちゃっただけですよ」
わたしがそう言い、笑って誤魔化すと、彼はふと振り向き「あいつが降りた駅、見なかったんですか?」と言って不思議そうな表情を浮かべた。
「···駅?」
「あいつも同じ美園で降りてましたよ」
「えっ?」
「だから、気まぐれとか偶然とかじゃなくて、前から目を付けられてた可能性の方が高いと思いますけど」
彼の言葉を聞き、何の警戒心もなく笑って誤魔化した自分の危機感の無さに呆れてしまう。
(え、嘘···、わたしあんな人、見たことないけど···)
わたしが戸惑い黙り込むと、わたしの斜め前を歩く彼は一度立ち止まり、そしてわたしを見下ろした。
その目元は鋭く、一瞬睨みつけられているような感覚に陥ったが、しかしその奥には濁りのない澄んだ瞳がわたしをとらえていた。
「それに、冬柴さんはおばさんなんかじゃないですよ」
その言葉にわたしはハッとする。
(どうしてわたしの名前を?)
と思ってすぐに、わたしは彼に見覚えがある事に気付く。
「―――あ、もしかして、凪原(なぎはら)くん?」