春雷ブロッサム


あの日以降もわたしはいつも通り達也にお弁当を作り続けた。

そして一ヵ月経つ頃には、同じような付箋が手元に8枚も集まっていた。
内容はいつもわたしを挑発するような言葉ばかりだった。

その間、わたしはお昼休憩の時に達也の姿を探すようになっていた。
付箋を忍ばせている相手を見つける為だ。

達也とは、結婚後も同じ本社で働き続けていた。
本来であれば、社内結婚をすれば妻側が他支店に異動になる事がほとんどなのだが、達也は営業部、わたしは総務部で部署が違う事と、総務部の鈴村(すずむら)部長が「冬柴(ふゆしば)ちゃんは、総務に必要な人間よ」と上層部に掛け合ってくださり、わたしは異動せずに"冬柴"と旧姓のまま在籍する事を許してもらえたのだ。

ちなみに鈴村部長は、外見は体格の良いダンディーな男性なのだが、心はピンク色が大好きな乙女だった。

話しは戻るが―――
わたしは普段、社員食堂でお昼休憩を過ごしているのだが、社員食堂で達也の姿を見掛けた事はなかった。

しかしある日、社員食堂に向かう途中で偶然達也を見掛けた。
その隣に居たのは、営業事務の古川(ふるかわ)さんだ。彼女は確か、20代半ばの派遣社員のはず。

仲睦まじそうにするその姿に、わたしはあの付箋を忍ばせている相手が古川さんである事を悟った。

達也の手には、わたしが持たせたランチバッグがあり、二人はそのまま給湯室へと入って行った。

それから達也と古川さんは、5分も経たない内に給湯室から出て来て、そのまま外へと出掛けて行った。
わたしは二人が外へと出掛けて行ったのを見届けた後でこっそりと給湯室へと入った。

すると、給湯室にあるゴミ箱の中を見て、わたしは絶句した。
そこには、わたしが作ったおかずたちが無惨な姿で捨ててあるのを見つけてしまったからだ。
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