春雷ブロッサム

わたしはしばらくの間、ゴミ箱の中に散乱するおかずたちを見つめながら立ち尽くした。

前の日から下準備をして、達也よりも早く起きておかずを作り、お弁当箱に詰める前に粗熱を取りながら後片付けをして、どう詰めれば綺麗に彩り良く見えるか、飽きずに食べてもらえるか···―――
色々考えながら作ったお弁当。

それが一口も手を付けられてないまま、ゴミ箱行きになっていた。
わたしの今までしてきた事が虚しくて、あの時間がどれだけ無駄だったのかを思い知られた。

(わたし、何でお弁当なんて作ってたんだろう···)

お弁当を作りを始めたきっかけは、将来子どもが出来た時の為に少しでも貯金をしようと、節約目的で始めた事だった。
しかし、まだ見ぬ子どもの為に貯金をしたいという気持ちはわたしの一方通行で、達也は一向に興味を示さなかった。

(わたしは、無駄な事をしてきてしまったんだ···)

綺麗に巻けたはずの玉子焼きが崩れている姿を見て、あまりの虚しさからわたしは笑えてしまう。

(真剣に考えていたのは、わたしだけだった。達也にとっては、どうでもいい事だったのだ)


その日の夜、わたしは連絡もなく夜遅くに帰宅してきた達也に「話があるんだけど」と声を掛けた。

達也はわたしが先に眠っていると思ったのか、起きて待っていた事に驚きつつも「なんだよ」と不貞腐れた表情で乱暴にソファーに腰を落とした。
そんな達也のワイシャツからは、微かに女性ものの香水の香りが漂ってきた。
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